読んだものの中から<11月>
『アナロジーの力 認知科学の新しい探求』 キース・J・ホリオーク/ポール・サガード著 鈴木宏昭/河原哲雄監訳 新曜社
人は何か新しい事態に直面すると、これまでの経験や似た事柄から類推して判断しようとするよね。決して理詰めではなく、直感や飛躍的に。
そうした比喩とか例え話とかのアナロジーが、幼児から、詩人や学術研究にいたるまで、いかに思考の道具として駆使されているかを、丁寧に辿り概説している。
こうして見ると、アナロジーって人間(ある種の霊長類を含めて)の、すごく原始的な思考方法というのがわかる。
でも、そのきわめて原始的な方法が、米国が軍事介入するかどうかの判断に、大きく影響しているとか。
フセインはヒトラーとだぶったため、第2次大戦の栄光よ再び的に即攻撃が決断され、それに対して北朝鮮はといえば、鬱蒼とした地勢や底のはかり難いアジア的なものが、ベトナムの悪夢を思い起こさせるため、強行的な介入に踏切れず弱腰路線ということらしい。なんだか、頭を抱えさせられてしまうんだけど...。
『おのぼり物語』 カラスヤサトシ著 竹書房
実体験を自虐的なギャグで綴った漫画で、人気を集めるカラスヤサトシ。彼が30歳の頃、漫画家で身を立てるべく、上京したときの実話をもとにした作品。
なので、いつものギャグは、やや後退気味。
しかし、通常その自虐のバカバカしさの向こうに、孤独や哀切を滲み出すのに対し、今作は逆に、都会に漂う儚さの向こうに、「もう、笑っちゃうしかないだろ」的な、人の持つ根源のバカバカしさがあぶりだされる。
とかいっても、そんな仰々しいもんじゃ決して無いです。
笑ううちに、ジワーッっと来て、そのペーソスの中で、くすぐられて....笑って泣けます。
『シェイクスピア物語』上巻下巻 チャールズ・ラム,メアリー・ラム著 安藤 貞雄訳 岩波文庫
ラム姉弟が、少年少女向にと、シェイクスピアの戯曲を物語へと改作したもの。
「じゃじゃ馬ならし」「お気に召すまま」など10篇の喜劇、四大悲劇を含む6編の悲劇、さらに「テンペスト」などのファンタジー的なロマンス4編の計20編がおさめられてます。
少年少女向けといったって、200年以上にわたって読み継がれてきただけあって、大人が読んでも面白いし、何しろ似た筋立てで(男装のお姫様とか、しょっちゅう登場するでしょ)こんがらがっちゃうシェイクスピアが、よーく整理できる。
よくある「5分で世界文学がわかる」みたいなダイジェスト本じゃないけど、気軽にシェイクスピア戯曲のほぼ全貌がわかってしかも断然面白い。だって本物の文学作品だからね。
『闇をひらく光―19世紀における照明の歴史』 ヴォルフガング・シヴェルブシュ 著 小川 さくえ 訳 法政大学出版局
蝋燭からガス燈そして電気へと19世紀に飛躍的に変容した照明の歴史が、街灯、家、劇場など様々な場面において詳細に検証されている。
街から闇を一掃すべく街灯は、すなわち支配管理の象徴であり、そのため庶民たちの反抗の証として、フランス革命時には、貴族たちを縛り首にするロープを引っ掛けるのに使われたとか、個々の蝋燭が、中央から供給されるガスや電気の線でつなげられた端末へと代わる様子は、資本主義による管理化とパラレルであったとか、さすがシヴェルブシュ、含蓄に富んでます。

